妻が海外赴任になったけど、僕はどうすれば?

アラサー夫婦の妻が海外赴任になり、ついていった夫のブログ。ロンドンでの生活も綴ります。

イギリスの医療事情(2017年初頭版)

※今回のエントリは医療の話ですが、2017年2月現在で私達夫婦で経験したこと、イギリス在住歴の長い人から聞いた話がメインになっています。
しかし、この問題は場所によっても変わることが多いと思うので、もし事実と異なるものがあったら是非お知らせ下さい。

イギリスの医療は、真っ当な人であれば外国人でも加入することが出来る国営の医療サービス(NHS)が基本だ。各種処置はNHSで受ける限りに置いて基本的に無料と、日本よりも優れた制度の様に聞こえる。
ところがどっこい、実際には医療を求める人が多すぎて待ち時間が異常に長くなっていること、それにより必要な処置を受けられない等、深刻な問題が発生しているサービスでもある。

NHSとは別に、私的(Private)な医療機関も多数存在する。公立学校に対する私立学校みたいなものだ。
但し、Privateを利用すると診療代がべらぼうに高い。
日本人向けの医療機関で、問診+血液検査をやって安くて300£とかである。色々検査をしたりすると400£,500£,600£と跳ね上がってゆく。もちろん処方薬代は別だ。
こうした水準なので、Private Health Insuranceという保険に入る人も多い。私もこちらに来た際に勧められて加入した。
ちなみにInsurance Planを組もうにも医療英語がさっぱりわからなくて苦労した・・・この話はまた別途。

イギリスで具合が悪くなったらどうする?

NHSを利用する場合、まずはGP(General Practice)へ診察を予約する。
GPとは、内容に関係なく具合が悪い際にまず診療を依頼するかかりつけ医である。このGPがより大きな病院での処置の必要があると認めた場合はReferrral(紹介状)を発行してくれて、それを元に大病院で手術等の処置を受けることになる。
ちなみにGPは登録しないと受けられないので、入国したらGP登録も早めに行ったほうが良い。
以下のページから最寄りのGPの登録フォームを入手し、記入して提出しにいきましょう。

Find GP services - NHS Choices

ちなみに、Private GPという手段もあり、60£ぐらいで15分位の診察を受けることが出来る。
しかしGPはGPなので、専門的な処置が必要な場合はReferralをもらうことに変わりはない。

「具合が悪い」のレベル感

イギリスでは、「具合が悪い」の中にただの風邪は含まれない。本当に医者の処置が必要なものだけを言う。
実際にGPに予約を取る必要があるケースは、インフルエンザ等ウィルス性のもので抗生剤が必要な場合、外科的な処置が必要な場合等である。
なお、GPの予約が取れるのは早くて1週間後。悪ければ2週間以上。そう、ただの風邪なら予約を待ってる間にほぼ治る。
挙句、大病院へReferralを貰ってもその予約がまた1ヶ月後、ということだってザラだ。
例えば足を捻挫して歩くのが辛いが、どうにか耐えて1週間待ってGPの診療を受けられたと思ったら、本格的な処置はその1ヶ月後。
やってられるか!という人(そして予算がある人)のためにPrivate ClinicやPrivate Health Insuranceがある。
お金があるならそのままPrivate Clinicに行ってもいいし、保険に入っているなら保険でカバーされているPrivate ClinicにReferralを書いてもらい、NHSよりもよっぽど素早く処置を受けて費用は保険でカバーする、という訳だ。

ちなみにイギリスではただの風邪ぐらいなら、スーパーで30ペンスとかで売っているParacetamol(一般的鎮痛薬)を飲んでじっとしているのが通常である。
ただの風邪でGPなんぞ行こうものなら「寝る以外何もできんのにアンタ何しに来た?」となる(らしい)。
イギリスでは何かあったらParacetamol、特に喉が痛いならStrepsils。これ大事。

イギリスで緊急を要するレベルで具合が悪くなったらどうする?

大病院のうち、A&E(Accident & Emergency)があるところへ駆け込む。
NHSでも事前登録等は特に不要で、本当に必要なときは駆け込めるようになっている。

ただし、とてつもない待ち時間を覚悟する必要がある(緊急性で上下するが)。
私の家内が尿管結石の痛みで駆け込んだときは、病院到着から解放されるまでに11時間を要した。妊婦だからという特殊事情もあったが。この話もまた別途。

NHSの待ち時間がとてつもなく長いのは何故?

色々な所で言われているが、基本的には需要に対して供給が追いついていないからだ。日本でも医師不足が指摘されているが、その比ではない。
これには、移民問題が大きく関わっている様だ。
ご存知の通り、EU加盟国は人の行き来も自由だ。
そのため、賃金水準の高いイギリスにEU内の国から大量に人が押し寄せたため、このような状況になっている。
公共サービスが当初想定していない水準の患者数になってしまったということだ。
また、特にA&Eの待ち時間が長時間となっている理由は、事前登録が不要であり、かつ身分証のチェック等をされるわけでもないので貧困層がGP代わりに来ているためらしい。

終わりに

こうした公共サービスが無料であるのはありがたいが、これだけ患者が多ければ一人一人にそう時間を割けるはずもない。
イギリスで毎年健康診断を受けていたのに、日本に帰った際にたまたま健康診断を受けたら悪い病気がみつかった、という事例も存在する。

この問題はよくBBCなどでも採り上げられており、昔からイギリスに住む人々にはかなり深刻な問題として認識されている。
20年ほど前に国際結婚して日本から移住した方が職場の同僚にいるが、「こうした問題を考えるとBrexitは大賛成」と言っている。
この発言が医療問題の影響の広さ、深さを物語っている様に思える。